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DINKs女性の思想が垣間見える映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』【ネタバレ考察】

2019年に制作されたフランス・ベルギーのスリラー映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』。
Netflixのおすすめに出てきて気になっていた作品。
時間を見つけてようやく鑑賞しました!

こちらの作品、実はDINKs女性の思想…極端に言えばDINKs女性の抱える「闇」が垣間見えるシーンがあります。

そこで今回は、映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のあらすじ・見どころを解説しながら、映画に登場するDINKs女性についてお話したいと思います。

ジャンルはスリラーとなっていますが、怖いシーンはほぼなく、ミステリーの要素が強い映画ですのでご安心ください!

『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』あらすじ

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『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』などのベストセラー小説を生み出した小説家ダン・ブラウン。
この映画は、そのダン・ブラウンによるシリーズ第4作目『インフェルノ』の出版秘話がモデルとなっています。

ベストセラーシリーズの最新作である『インフェルノ』の翻訳にあたり、作品が不正流出するのを防ぐため、翻訳家たちを地下室に閉じ込めて翻訳作業をさせていたとイギリスの情報誌が報じ、それがこの映画のモデルとなっているのです。
(実話をモデルにはしていますが人物や事件など映画の内容はフィクションです)

物語は世界的ベストセラー小説『デダリュス』の最新作の出版にあたり、フランスに集められた9人の翻訳家たちが、地下室で翻訳作業をするところから始まります。

『デダリュス』の出版権を持つ出版社の社長・エリックは、『デダリュス』の著者であるオスカル・ブラックを唯一知る人物と言われており、このベストセラー小説を多言語翻訳し世界で同時発売すると発表し、さらに話題性を作り出します。

この翻訳作業のためフランスに集められたのは、以下の9カ国・9人の翻訳家です。

  • ロシア語の翻訳家・カテリーナ
  • イタリア語の翻訳家・ダリオ
  • デンマーク語の翻訳家・エレーヌ
  • スペイン語の翻訳家・ハビエル
  • 英語の翻訳家・アレックス
  • ドイツ語の翻訳家・イングリット
  • 中国語の翻訳家・チェン
  • ポルトガル語の翻訳家・テルマ
  • ギリシャ語の翻訳家・コンスタンティノス

(日本では発売されないのか。残念…)

この9人の翻訳家はフランスの豪邸(の地下室)へと集められます。
この豪邸にはプール、ジム、シアタールーム、ボーリング場など娯楽施設が完備されており、一人ひとりの部屋はとても広く、当然食事やワインも十分に与えられ、豊富な書籍や資料などに囲まれた快適な職場環境が用意されています。
(地下室というのが息苦しいけど、正直サイコー!ここで仕事したーい!)

しかし環境は一見素晴らしいですが、作品の不正流出を防ぐため、翻訳家たちは携帯・パソコン・その他すべての通信機器を没収され、翻訳作業が終わるまでの2ヶ月間、軟禁状態となります。
(え、スマホ没収されるの?やっぱ行かない!!)

作品が流出しないようもちろんパソコンのUSBには鍵がかかっており、翻訳作業中は警備員に監視され、翻訳作業場から原稿を持ち出すことも不可能。
流出防止策が万全な状況に翻訳家たちは置かれます。
このやり方に出版社社長・エリックの懐疑的な一面や利益をなんとしてでも独占したいという傲慢さが透けて見えますよね。

dinks magazine

翻訳するための作品は毎日20ページずつ渡されます。
自分の好きな環境、好きなペースで自由に翻訳できない息苦しさや、作品の全容を知らないまま少しずつ翻訳する作業の在り方に翻訳家たちは疑問を抱き始め、正確な翻訳作業のために何とか作品の続きを手に入れられないかと画策する者も出てきます。

軟禁状態かつ監視下での作業に不満を持ちながらも、共に生活し、愛する文学について語り合い、翻訳家同士の絆が国の違いを超えて深まっていく中、ある日「原稿の冒頭10ページを流出させた。24時間以内に500万ユーロ振り込まないと次の100ページも流出させる」という脅迫メールが出版社社長・エリックの元に届きます。

翻訳家たちは完璧な要塞の中に閉じ込められているのにも関わらず、持ち出すことが不可能な作品の原稿が外部に流出したのです。
ここから物語が大きく動き出します。

本作に登場する「DINKs志向の女性」とは一体誰か

※ここから先は一部ネタバレを含みます。鑑賞予定の方はご注意ください!

本作は、純粋に文学を愛する者から文学の自由が奪われているところに主題があると感じさせます。
文学を金儲けの道具にし、己の利益ばかりを追求して、忠実な翻訳のための努力など作品への愛を感じられない出版社社長のエリックに、制裁を加えようと立ち上がったアレックスをはじめとする登場人物たちの怒りがさまざまな形で現れています。

作品を理解し、著者の思いや登場人物の人間性を正しく読者に届けたいと願った、翻訳家であり熱狂的な一読者であるカテリーナの行動をはじめ、文学を愛し、出版社の仕事を続けるためエリックの横暴に逆らえなかった秘書・ローズマリーが反旗を翻す姿などからも静かな怒りが感じられますね。

この章で紹介する翻訳家の女性も、文学への愛をエリックに踏みにじられた被害者の一人でした。
本作に登場するDINKs志向の女性とは、デンマーク語の翻訳家・エレーヌです。

出版社社長エリックの元に作品を流出させるという脅迫メールが届いた際、9人の翻訳家たちは容疑者として部屋や持ち物の隅々まで調べられました。
その際、エレーヌの持ち物の中から手書きの小説が見つかります。
作品をデンマーク語で書き写したものではないかと流出犯の疑いが一瞬エレーヌに向けられますが、これは実はエレーヌが個人的に執筆したもの。
エリックは流出の証拠ではないと認めたものの、エレーヌに対し「翻訳作業期間に他の仕事をするのは契約で禁止していたはずだ」と言い、さらに「才能がない。自分でもわかっているだろう」とエレーヌが一生懸命書いた作品を暖炉で燃やしてしまいます。
(同じ文章や話の流れって捻り出しても2回目はなかなか出てこないんだよな…契約違反だとしても、頑張って手書きで書きためた小説を燃やすなんて酷い〜!)

エレーヌは、食堂で皆に作品の今後の展開予想を話してみせたとき「無難で面白みに欠ける」と翻訳家たちからも評されたシーンがあり、自分には才能がないと自覚させられたであろう伏線もありました。

エレーヌは翻訳家たちとの交流の中で「夫とまだ小さい子どもを家に残してここにやってきた」と話し、

「本当は小説家になりたかった。子供は欲しくなかったけど夫が望んだので産んだ」
「やりたいこと(=小説を書くことや世界を旅すること)があるのに子供を持ったことを後悔している」

と明かしています。

エレーヌは子供を持つ母親でありますが、DINKs志向の女性だったのですね。

物語の後半で、エレーヌは図書室で首吊り自殺をはかって亡くなってしまいます。

この自殺には、自分の書いた小説を否定し踏みにじった出版社社長エリックへの怒り、才能のなさを自覚した失望が込められているとともに

・仕事に生きる人生を歩みたかった自分の選択への後悔
・母親になったのに子供を愛せていない罪悪感
・夫や子供を蔑ろにしてでも小説を書きたいと思っている自分への嫌悪感

なども要因にあったのではないかと感じます。

家を出てこの地下室での隔離生活を始めてから「滞っていた小説の執筆がはかどった」とエリックに言っているシーンもあり、家庭では思うように小説が書けなかったという背景も伝わってきます。

この映画のメインテーマはDINKsとなんら関係はありませんが、このエレーヌという1人の女性翻訳家の人生にDINKs女性の心の闇が垣間見えた気がしますね。

さて、この記事ではこの映画のメインテーマのネタバレは伏せておきます。

作品を流出させた犯人は誰なのか?
そして、要塞に囚われた作品をどうやって外部に流出させることができたのか?

その斬新なトリックや、ラスト20分のどんでん返しに注目してぜひ鑑賞してみてください!

まとめ:ラスト20分のどんでん返しが秀逸な作品

今回はDINKs女性の心の闇にも触れた映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』をご紹介いたしました。
不穏な空気を漂わせながら静かに進んでいくストーリー、そしてラスト20分で明かされるどんでん返しが秀逸な作品でした。
実話がモデルというのも興味深いですよね。
まだ鑑賞していない方はぜひご覧くださいね。

画像元:『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』

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