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結婚や子育てに対する若者の本音「結婚、子育ては裕福な人のオプションになりつつある」

政府が6月13日に”異次元の少子化対策”の具体的な内容である「こども未来戦略方針」を正式決定したことが話題となっていますね。
これから2030年代までの6~7年が少子化傾向を反転できるかどうかの「ラストチャンス」だと言われています。
このままの状況で2030年代に突入すると、若年人口は現在の倍速で減少し、少子化に歯止めのかからない状況になるのだそうです。
これまでとは違う少子化対策が求められている今。
一般的に「少子化対策」と聞くと、育児休業や児童手当など「子育てに関する政策」ばかりが思い浮かびますよね。
しかし、実は結婚する人が減っているという問題が根源にあると言われています。

「選択的子なし」や「DINKs」と呼ばれる人の割合が増えてきている一方、そもそも結婚をしていない独身の人の割合も急増しています。
一体、なぜなのでしょうか。

結婚や子育てに対する若者の本音「結婚して何が変わるの?」「子どもを持つのは荷が重い」

先日、私は中央大学の山田昌弘教授がコメンテーターとして出演されていた関西テレビの番組をYouTubeで見ました。

動画:関西テレビ「newsランナー」(2023年6月13日放送)

番組内で「結婚や家庭を持つこと」について本音を語った若者たち。

⚫︎手取りが月20万円の25歳男性

・結婚しない理由の一つに「給料が少ない」「子供の教育にかかるお金が不安」がある
・結婚して家族が増え、家を借りたり建てたりするとなった時に(収入が)足りないと思っている
・(コロナ禍による経済的な影響で)学生時代に仕送りがなくなったり、大学院進学をするにあたって親と揉めたことがある
・自分の子供には私立を選ぶことや大学院進学などの希望があったとき応援できるような余裕を持って子どもを産みたい

⚫︎税理士事務所で事務をしている30歳女性

・転職したばかりなので今は仕事に集中したい、今は自分に必死
・結婚してもいいかなと思った人に出会った時に結婚したい

⚫︎母子家庭で育った33歳男性

・結婚は紙切れだと思っていて、結婚して何が変わるの?と思っている

⚫︎システムエンジニアの26歳男性

・将来的に子供が欲しい
・子どもを作るために結婚したい
・でも経済面が重くのしかかってくると感じている、大学などにもすごくお金がかかるから

⚫︎教員として勤務したことがある36歳女性

・結婚はしたいけど子供は望んでいない
・年の差があると分かっていても中学生や高校生にもイラっとすることがあった
・子育てをする人はすごいなと思う、自分にはできないと感じる
・子どもを持つのは荷が重い、だから結婚も今はしなくていいと思っている

⚫︎フリーランスの26歳女性

・結婚して子どもを持つには経済的に余裕がないと感じている
・自分の収入がちゃんと安定しないと準備不足かなと思う
・自分の子供を持つことは自分の責任だと思っているから
・今は収入を趣味や自己研鑽に回している

さまざまな価値観、考えをもつ上記の6人の若者の言葉からは、必ずしも結婚や子育てに後ろ向きな気持ちばかりではないことがわかります。
中には「結婚や子育てをしたいとそもそも望んでいない」という人もいますが、現在の状況が理想的ではない、経済面などに不安があるために結婚や子育てに踏み切れないという人も多いんですね。

子どもを持たない人が増えているのは「結婚しない人」の増加も背景

50歳時の未婚割合は30年前に比べて「爆増」していると言っても過言ではない状況です。

50歳時の未婚割合
1990年 2020年
男性 5.6% 男性 28.3%
女性 4.3% 女性 17.8%

(参照:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」)

このように数字で見てみると、その急増ぶりは一目瞭然です。
30年前に比べて、50歳時点での未婚の割合が男女ともにおよそ4〜5倍に増えているんです。
男性に関しては3割弱、およそ3人に1人が未婚ということになります。

経済的に不安定な非正規雇用の人が結婚できない傾向にあることは、30年ほど前から言われてきました。
非正規雇用の人を減らす取り組みも政府は続けてきたはずですが、非正規雇用、フリーランス、アルバイトの人が増えてきているのが現状です。
政府が力を入れてきた「育児休業」も、関係あるのはほとんど正規雇用の人だけ、育休などの社会保障が充実しても恩恵を受けられない非正規雇用の人々がたくさんいるのです。
これでは子育て対策を強化しても、非正規雇用の人々は前向きな気持ちになれるわけがありませんよね。

冒頭でも触れたように、少子化対策は子育てに関するものだけでなく、結婚対策も重要な課題。
そして「結婚対策」というのはほぼ「経済問題」と捉えて過言ではないそう。

先ほどの番組内で、興味深いデータが紹介されていました。
結婚している男性(有配偶者)の割合をみると、正規雇用が6割近くということがわかっているんです。

結婚している男性の割合 (30〜34歳)
正規雇用 59.0%
非正規雇用 22.3%
パート・アルバイト 15.7%

(参照:こども家庭庁)

このように雇用形態と結婚の関連性を数字で見ると、これだけ差が出ているということは雇用形態や収入が結婚と密接に関わっていることは容易に推測できますよね。

婚活においても、結婚相手に求めるスペックとして「経済力」を見る傾向が顕著にあり、自分の収入が低いと婚活市場でも求められていないように感じるという声も多いようです。

家庭を持ったはいいが、お金が足りなくなってしまったら困る…。
子供に不自由な思いをさせたくない…。
収入が少なかったり、雇用が不安定な人が結婚・子育てなど家庭を持つことに不安を感じるのは当然のことと言えます。

働き方が男女ともに多様化している今、正規雇用の人に向けてだけでなく、さまざまな働き方の人が恩恵を受けられるような少子化対策を打ち出さなくては是正できないのではないか、と懸念されています。

また、結婚・子育てをしている自身の親が経済的に厳しそうだという姿を見ていたり、家族のために必死に働いている姿を見て「結婚・子育て」に前向きなイメージを持てない若者が増えているのも一因と言えるのではないでしょうか。

「結婚、子育ては裕福な人のオプションになりつつある」

先ほどの動画に寄せられていたコメントに興味深いものが多かったので、ピックアップしてご紹介します。

  • 仕事が充実する時期と結婚適齢期が重なるから難しいと思う
  • ワークライフバランスを考えたら1人で楽しく生きるのがコスパいい
  • 今の時代は結婚よりも老後資金の為に貯める方が先決だと思う
  • 昔と違って恋愛や結婚に変わる娯楽快楽がありすぎる
  • そもそも若者は日本にもう希望を持ってないし、自分が老後まで安心して生きていけるようにって守りの姿勢に入ってるから結婚できても子供持とうって思うわけないよね
  • 昔は結婚は勢いって言われてたけどある意味当たってる気がする。冷静になったら条件とか考えてなかなか足取り重くなる
  • 子供が出来て経済的にしんどい思いをしながら生活するよりも、程よく余裕のある今の2人の生活を楽しみたい
  • 不安な気持ちに寄り添える力もないのにやたら孫をせがむ親にはなりたくないな
  • 色々な価値観があって良いと思う。ただ子供産んでつくづくわかる。子育てってある程度の自己犠牲も子供のためなら構わないという人ではないと成り立たない。
  • 若者の負担が大きすぎる。30年前は稼いだお金の8割を自分のために使えたらしいけど、今は実質的4割ちょっとしか使えない
  • 日々の自分の暮らしで精一杯。婚活する余裕も金もないし、子育てなんてとてもじゃないけど
  • (少子化対策は)もう減るスピードを緩やかにする対策にしかならないよね
  • 娯楽が増えた世の中で別に結婚しなくても幸福になれるのも一つの要因や
  • 結婚したいって言ってる人は両親見て幸せに見えた人だね
  • 今の子は慎重よね。いい意味でも悪い意味でも。子供をちゃんと幸せにしてあげられるのかなっていう 優しさと不安が混じってるんだと思う
  • 結婚、子育ては裕福な人のオプションになりつつある
  • 結婚というシステム自体がもう無理なんじゃないだろうか

経済的な不安などから「結婚したいけどできない」という若者がいる一方で、娯楽などが充実し、幸せを感じることも人それぞれ多様になってきている今の時代において結婚・子育てを望んでいない若者も増えていることがこうした生の声から見えてきます。

SNSなどを通じて、他人の生活ぶりなども垣間見えるようになった現代。
暮らしの水準を上げたいと考える人も多く、結婚や子育てをして経済的に余裕がなくなるくらいなら、独身・子なしで生活の質を落とすことなく、趣味や娯楽など自分にとって幸せな生き方を選択したいと考える若者も増えているようです。

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