令和に入り、日本も国際社会に追随して多様性を尊重する風潮が高まりました。
多種多様な個性を持つ人同士で共存することが重要なテーマとなっている現代ですが、言うは易し行うは難し。
まだまだマイノリティの生きづらさは払拭しきれてはいません。
子なし夫婦もまた、現代社会においてはマイノリティに部類します。
生きづらさや将来への不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
自分が選択した人生に自信を持ち、幸せを感じながら生きていくためにはどうしたらいいのか。
「幸せ」について考えるとき、筆者がおすすめしたいのは「アドラー心理学」です。
今回は社会で生きづらさを抱えているDINKsの方々に向けて「アドラー心理学」の考え方をかいつまんでご紹介します。子なし夫婦の方々の悩みを軽くする一助になれば幸いです!
DINKsに知ってほしい「アドラー心理学」とは
「アドラー心理学」とは、オーストリア出身の精神科医であるアルフレッド・アドラーが提唱した心理学で、「個人心理学」とも呼ばれます。
「人は目的のもと生きている。幸せになるには勇気を持つこと」というのがアドラー心理学の大テーマです。
内容をご存知でない方向けに、ベストセラーとなった岸見一郎氏・古賀史健氏の書籍『嫌われる勇気』を参考に、ざっくりとではありますが、アドラー心理学の根幹となる考え方についてご紹介したいと思います。
すべての悩みは対人関係からくるもの
アドラー心理学では、人生における全ての悩みは「対人関係」からくるものだと教えています。
もしあなたが今何かに思い悩んでいるとしたら、それは紐解いていくと「対人関係」に行き着くのではないでしょうか。
- 親や親戚から「子供を産まないのか」と急かされる
- 周囲との生活や価値観の違い
- 将来寂しい人生を送ることになるのではないかという不安
- 子供なしで夫婦の仲が破綻してしまわないかという懸念
DINKsの方には上記のような悩みが多いと思いますが、確かにいずれも突き詰めると「対人関係」の問題と言って過言ではありません。
人は「目的」があって今の感情を選んでいる
心理学の世界ではフロイトが提唱する「原因論」と、アドラーが提唱する「目的論」という2つの対立する考え方が存在します。
原因論は「原因がありそれに見合った結果がついてくる」という考え方であるのに対し、アドラーの提唱する目的論は今の自分の目的に見合うように過去の経験を利用している」という考え方です。
目的論を解釈するための例として代表的なのが「トラウマの否定」です。
原因論に基づけば「過去にこのようなことがあった。だから今の自分はこうなんだ」という解釈になりますが、目的論に基づくと「今の自分が持つこうしたいという目的のために過去の出来事を都合よく解釈しているだけでトラウマは存在しない」という解釈になるのです。
アドラー心理学によると人は今の自分の「目的」に合わせて都合よく過去を引っ張り出してきていると考えることができるんですね。
人は過去の出来事に影響されることなく今の自分次第でどのようにでも未来を変えていくことができると考えられるわけです。
そしてアドラー心理学では、感情にも同じことが言えるといいます。
「喜ぶ」「怒る」「悲しむ」などの感情は私たちが目的を達成するためにこしらえているものだと論じています。
これだけでは少し分かりづらいので例を見てみましょう。
あなたが食事を作って待っていたのに旦那さんが連絡なく食事を取って帰ってきました。
あなたが「なぜ連絡をくれなかったのか」と怒るとしましょう。
- 原因論:連絡をくれなかった。そのために作っておいた食事が無駄になったので怒った。
- 目的論:作っておいた食事が無駄になった。旦那さんに今後同じことをしてほしくないために怒った
原因論と目的論ではこういった違いが生じるというわけです。
「感情は目的なんかよりも先立って生まれるもので制御できないし、計画的にそうしたわけじゃない!」
と思われるかもしれませんが、アドラー心理学においては感情は出し入れ自在な道具であり、それを人が扱っていると考えます。
思い返してみると、確かに怒らなくてもいい場面で怒ったり、不機嫌になる必要がない場面で不機嫌になったりするのには、根底に相手にこう思わせたい、こうして欲しいという意志が働いている時が多いように筆者は感じました。
感情も目的に沿って自分がコントロールしているのだと認識すれば、対人関係においても自分が望むように自分自身の感情を制御可能だと思えるようになるかもしれませんね。
対人関係を改善するにはまず「自己受容」
対人関係を改善していくためにはまず自分自身がありのままの自分のことを受け入れ、自分には価値があると信じ「自己受容」をすることから始めましょう。
「大切なのは何が与えられてるかではなく、与えられたものをどう使うかである」というのはアドラーの有名な言葉ですね。
「子どもを産まない選択をした私は間違っているのだろうか」
「子どものいない私は価値のない人間なのだろうか」
と自分を頑なに否定せず、今置かれている自分の環境や自分の思想を受け入れ、ありのままの自分自身を受け入れていく。
このことで幾分か対人関係における悩みや不安が和らぐのではないでしょうか。
「他者信頼」と「他者貢献」
アドラー心理学では先に述べた「自己受容」と同様に「他者信頼」と「他者貢献」が幸せの鍵だとしています。
他者信頼とは呼んで字の如く、他者を信頼することです。
「信頼」は「信用」とは異なり、条件付きのものではなく、無条件に信じることを指します。
相手が自分に対してどのように行動するかは関係なく、自分が相手に対して信頼を寄せることから始めようという考え方です。
人は裏切りや傷つけられることを恐れ、なかなか自分から信頼を寄せることはできません。
しかし、相手がどうするかは関係なく、自分がまず信頼することが幸せになるための第一歩であり、勇気であるとアドラー心理学では教えています。
そして同じように大切なのが「他者貢献」です。
他者貢献も呼んで字の如くですが「他者に貢献すること」です。
人のために何かをすることが自分自身の幸せにつながると説いているんですね。
結婚し、パートナーのために何かをすることが「幸せ」と実感している夫婦は多いと思います。
「貢献」と聞くと、何かボランティアなどに参加しなくてはいけないのか、と思う方もいるかもしれません。
しかし、何か特別なことをしていなくても、あなたは家事や仕事を通して他の誰かに貢献しています。
「子どもを育てていない自分たちは少子化という社会問題にも貢献できずダメな人間なのではないか」
と塞ぎ込んでしまう子なし夫婦の方は多いですが、家事をすることで働いているパートナーを支えていますし、そのパートナーは社会に出て働くことで経済を回し、直接的に目に見えなくても必ず社会の誰かの役に立っています。
また、共働きの夫婦であれば、働くことで社会に還元し、巡り巡って子育て世帯やその他の世代を支えていることになります。
「自分は社会の一員として存在しており、社会の役目を自分なりの形で果たしている」と自覚することで、日々の意識、行動も少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
幸せになるには「勇気」を持つことが必要
幸せになるためにはありのままの自分自身を好きになる「自己受容」、無条件で相手を信じる「他者信頼」、そして誰かのために貢献する「他者貢献」が大切です。
そしてこれら3つのことを自分の習慣にするには「勇気」が必要です。
ですが、これらは今この瞬間から始めることができます。
あなた自身が意識を変えていけば、今この瞬間からあなたは「幸せ」だと感じることができようになるんです。
生きづらいという思いを生きているあなたも、自分を責めず、他者を敵だと思わず、自分自身も社会の一員であり、子育てを通じてではなくても社会に何らかの利益を与える存在であること、価値がある存在であるということを自分で認められるようになるといいですね。
人生は有限。たまには悩むことも必要ですが、悩み続けてばかりいてはあっという間に時間が過ぎていってしまいます。
みなさんが幸せを感じられるようになる第一歩、本記事がそのきっかけになれば幸いです*
「アドラー心理学」を学ぶのにおすすめな本
アドラー心理学を学ぶのにおすすめなのは、先ほどもご紹介した岸見一郎氏と古賀史健氏によるベストセラー書籍『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』。
この本は哲学者と青年の二人による対話形式でアドラー心理学をわかりやすく噛み砕いて解説しています。
頭では理解できても世の中に出て実際に行動に移すことは難しいという青年の葛藤にとても共感できますし、堅苦しい専門用語の羅列ではなく現代語での会話になっているので話がすらすらと入ってくるところが魅力です。
筆者も社会人1年目の時に手に取り、衝撃を受けた一冊でした。
(ちなみにその当時の筆者に一番刺さった言葉は「お前の顔を気にしているのはお前だけ」でした。笑)
今回ご紹介した部分だけでは筆舌に尽くしきれないほど、もっと納得感のある学びをこの一冊を通して得ることができると思います。
あなた一人でこの大きな世界を変えることはできないかもしれません。
しかし、あなたが変わることで、あなたが見る世界は確実に変わります。
そしてあなたが接する周囲の人々にも影響を与えることはできます。
ぜひ一度、読んでみてはいかがでしょうか。