DINKs

韓国でDINKsが増えている背景とは?共働き・高所得であるほど子どもを持たない傾向に

韓国では子供を持たない共働き夫婦のことを「DINKs族」または「DINK族」と呼ぶことが多く、近年急増していると言われています。

日本の出生率は1.26で、経済協力開発機構(OECD)の平均1.58を下回る結果となり少子化対策が急がれていますが、韓国でも2015年以降に出生率が一段と低下しており、2023年の合計出生率は0.72人と極めて深刻な数値となっています。

今回は、韓国で急増している「DINKs族」について詳しくご紹介いたします。

韓国で「DINKs族」が急増している背景は?

韓国統計庁が2023年12月に発表した「2022年新婚夫婦統計」によると、新婚夫婦(婚姻届を提出して5年未満の初婚の夫婦)81万5357組のうち、共働きで子どものいない夫婦が全体の28.7%を占め、最も多いという結果になりました。

「子どもを持たないこと」を肯定的に受け止める20〜30代は2015年の27.7%から2020年には44.1%まで増えていて、社会の雰囲気が変わってきていることの表れだと分析されています。

かつての韓国では「子どもがいる片働きの夫婦」が最もよく目にする家族の形でしたが、現在では子どもをつくらない共働きの夫婦である「DINKs族」が最も多いと言われています。

韓国で「DINKs族」が増えたのは一体なぜなのでしょうか?
その理由として、経済活動に参加する女性が増え、キャリアを優先視する文化が広がっていることが考えられます。

韓国開発研究院(KDI)によると、30~34歳女性の経済活動参加率は2017年の66.2%から2022年には75.0%まで上昇しています。
同院のキム・ジヨン研究委員は「子どもの養育は女性の経済活動参加の確率を低くする主要因」であるとし、「子どもを産まないか、産む時期を先送りする女性が増加していることが30~34歳女性の経済活動参加率上昇の最大の要因だろう」とコメントしています。

韓国には保守的な企業風土が残っており、妊娠・出産を機に昇進機会を逃す女性は少なくないそう。
妊娠・出産がキャリアに影響を与えると考える女性が多いため、キャリアを優先視する女性は子育てをしない、または先送りにする傾向にあるというわけです。

韓国女性政策研究院の調査(2019年)によると「子どもがいると就業やキャリアに制約を受ける」と答えた女性は77.2%に上っています。
仕事を頑張りたいと願う女性たちにとって、出産は大きなハードルになっていると考えられます。

また、夫と妻の所得水準を分けて分析すると興味深い結果が見えてきます。
韓国保健研究院に掲載された論文「新婚夫婦の住宅資産と出産」(2016年)によれば、結婚当時に夫の所得が高いほど最初の子どもを早く出産しており、妻の所得が高いほど出産遅延の可能性が高くなったとのこと。
「出産後復職の難しさが所得水準の高い女性の出産を遅れさせるのに影響を及ぼす」とハン・チャングン成均館大学教授は指摘しています。

韓国の合計出生率は0.72人と過去最低水準に

韓国の出生率は世界200か国のうちの最下位です。

2023年の合計出生率は0.72人過去最低の水準となりました。
2025年には0.65まで低下すると推定されています。

韓国の少子化の主な原因は、

  • 若者がおかれている経済的状況が良くないこと
  • 若者の結婚及び出産に関する意識が変化したこと
  • 育児政策が子育て世代に偏っていること
  • 男女差別がまだ残存していること
  • 子育ての経済的負担感が重いこと

と考えられています。

また、韓国の少子高齢社会委員会と文化体育観光省が19歳以上79歳以下の1200人を対象に行った「少子化認識調査」では以下のような回答結果が出ました。

  • 「必ず出産しなければならない」・・・22.5%
  • 「できればした方が良い」・・・42.4%
  • 「本人が望まなければしなくても良い」・・・38.1%

また、子どもをつくらない理由の1位は「養育や教育の負担」、次いで「経済的不安定」という結果に。

子どもがいない割合は高所得の夫婦が最多

韓国の統計庁発表の「2022年新婚夫婦統計」を所得区分別に見ると、平均所得が相対的に高い夫婦は「子どもなし」の割合が高いということがわかりました。
平均年収が7000万ウォン(日本円で約770万円)以上という高所得の新婚夫婦が53.8%と、子どものいない割合が最も高い結果になっているのです。

少子化問題の要因は先ほど述べたような経済的な問題と考えられていますが、近年では社会の競争圧力や不安にあるのではないかという分析がされています。
競争圧力とは、激しい競争社会の中で生きているという圧力を感じることです。
韓国は厳しい競争社会であり、子どものうちから習い事をするのが一般的で、夜遅くまで複数の習い事を掛け持ちしている子どもも多いです。
過酷な受験競争を勝ち抜いて有名大学を出ても、次は厳しい就職難が待ち受けています。
こうした生き残りをかけた激しい競争社会が子育てのハードルをさらに上げていて、単に所得が低いことや経済的な理由ばかりが要因ではないのでは、と考えられ始めているのです。

韓国・世宗大のペジョンウォン教授は「賢い人ほど子どもを産まない。子どもが生まれても格差がひどく、入試や就職競争で苦労する姿を想像するからだ」と語っているとのこと。

子どものいない割合は高所得の夫婦が最も高いという結果が出ていることからも考えられるように、経済的な理由だけが少子化の要因ではないと認識され始めています。

チェ・ジウン著『ママにはならないことにしました』に共感の嵐

韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せを綴ったチェ・ジウンさんの著書『ママにはならないことにしました』が大きな話題を呼んでいます。

子どもを産まないと決めたけれど、ある日「1人ぐらい産んでおいたら?」と姉に言われ不安が止まらなくなった著者は、同じ選択をした17人の女性たちに会いに行くことに。

「結婚が出産と同義語とみなされ、子どものいない結婚生活は不完全なものと認識され、子どもを望んでいないというと血も涙もない自分勝手な女扱いされる韓国社会で、私と同じ選択をした女性たちはどんな人生を生きているのだろう。
彼女たちは、どんな悩みを抱え、どんなときに幸せを感じるのだろう。
私は『私たちの星』の側にいる人たちに会ってみることにした。」
(プロローグより)

韓国社会を生きる女性の「子供を作るか否か」という迷いが綴られていて、日本の女性からも「共感した」という声の多い話題の書籍。

キャリアと出産など様々な理由で人生の選択肢に揺れる女性の想いが詰まった一冊です。
まだ読んだことがないという方はぜひ一度手に取ってみてくださいね。


ママにはならないことにしました 韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せ [ チェ・ジウン ]

まとめ

今回は韓国でDINKsが急増している背景についてご紹介いたしました。
韓国では子供を作らない共働き夫婦をDINKs族、またはDINK族といい、近年の調査によると新婚夫婦の中で28.7%と最も高い割合を占めていることがわかりました。
その背景には女性の社会進出が進んだこと、キャリアのために出産を敬遠する、出産時期を遅らせる女性が多いことが挙げられています。
少子化の原因は複合的ですが、主たる原因と考えられている経済的な問題だけではなく、厳しい競争社会による不安も背景にあるのではないかという分析がなされ始めています。

参考:東京新聞 [ https://www.tokyo-np.co.jp/article/232643 ]

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